TECHSCORE BLOG

クラウドCRMを提供するシナジーマーケティングのエンジニアブログです。

データサイエンス分科会活動共有会🔬を開催しました

シナジーマーケティング CTO の馬場です。2020年の年末、社内向けにデータサイエンス分科会の活動共有会を開催しました。

馬場 彩子(ババ アヤコ)
2001年入社のシナジーマーケティング最古のエンジニア(ほんとは2番目)。1番目が西尾です。
CTO になって早一年。ようやくCTOを名乗るときに噛まなくなりました。
カニLOVER🦀。先週末食べたばかりなのに既にカニロス。

データサイエンス分科会とは

データサイエンス分科会は、データサイエンスのシナジーマーケティング事業貢献を目的に2020年8月に発足しました。デジタルマーケティングを展開する当社のデータサイエンスへの取り組みは10年以上と古く、OPTMS CONTENT など世に提供されているサービスもあります。企業と人とをつなげるためのさらなるデータ活用方法を探究すべく、ベテランデータサイエンティスト西尾、期待の新星桂川、そしてCTO 馬場の3人で密やかに活動をしていました。

共有会

サイエンティストだけでは事業に結びつけることはできません。技術を活用し、事業をさまざまな人と共創する土壌をつくりたい。そんな思いから、2020年12月に活動共有会を開催しました。

共有会では3人それぞれが、当社のデータサイエンスへの想いを語りました。

まず、私が過去のデータサイエンス事業を踏まえ、当社のデータサイエンス戦略の課題と今後の取り組みについてお話ししました。 次に、西尾が現在取り組んでいるデータサイエンス事業(OPTMS CONTENT など)と、そこで得たシステムの展望について語りました。 最後に桂川がメールマーケティングをエンパワーメントしたい、という想いについて話しました。三者三様、それぞれの個性もみえた発表だったと感じます。

ここで、当日の桂川の発表の一部を紹介します




桂川 大輝(カツラガワ ダイキ)
2019年新卒入社のエンジニア。最近、自然言語処理の門を叩きました👊
断捨離の門も叩いています。

マーケティングの民主化を実現する

桂川です。共有会当日は、「シナジーマーケティングにおいて貢献したい『マーケティングの民主化』」と題して、具体的な案や取り組みについて発表しました。

f:id:techscore:20210210112547p:plain

はじめに、「マーケティングの民主化」とは何かを紹介します。私が考える「マーケティングの民主化」とは、誰もが(どんな企業でも)高品質なマーケティングを実現できる社会を意味します。具体的には、マーケティングにおいて次の2点を進めることだと思っています。

  • 作業の型化・自動化をし、マーケティングに継続的に取り組めるようにする
  • 企業や担当者の間に存在する知識の格差を緩和し、初心者が「できなかったこと」を「できること」にする

CRM施策を機能として利用できるようにする

f:id:techscore:20210210112604p:plain

シナジーマーケティングも「マーケティングの民主化」に貢献していると思います。 例えば、企業と消費者がコミュニケーションするCRM施策を、クラウドサービスであるSynergy!の一機能として提供することで、誰もが施策を実行できるようにしています。

施策を機能として利用できるようにした例として、「ABテスト機能」があります。この機能のリリースにより、

  • すでにSynergy!でABテストを実施していた人:ABテスト実施にかかる手間の削減
  • ABテストを実施していなかった(知らなかった)人:ABテストの実施

が可能になりました。 このように、施策を機能化することで誰でも利用できるようにする、という点においては、Synergy!は「マーケティングの民主化」に貢献していると言えます。

他に貢献できる余地はあるのか

f:id:techscore:20210210112618p:plain

そんなSynergy!ですが、マーケティングにおけるどんな工程に貢献しているのか整理します。ここでは、メール配信に焦点を当てて考えてみます。現状、利用者が検討・決定していると思われるのは以下の工程です。

  • 目的・ターゲットの設定
  • 配信内容の決定
  • メール詳細の決定

そして、Synergy!が配信自体を実行しています。

f:id:techscore:20210210112634p:plain

この時、利用者に依存する工程を削減し、貢献できる余地はあるのでしょうか?(“誰もが”を増大することができるのでしょうか?)私は、「メール詳細の決定」について、Synergy!がサポートできるようになると考えます。 メール配信をする場合、内容によってそのメールの効果(開封率など)が変わります。例えば、SuperOfficeのレポートによると、配信タイミング、件名の文字数、件名に入れる文字の種類などによってメールの開封率が変わることがわかっています。つまり、このようなこの経験者しか知らないメール作成の知識があれば開封率の高いメールを作成し届けることができます。 そこで、Synergy!で、「メール詳細の決定」の工程のサポートを機能で実現できないかと思いました。 これを実現するためには、まず経験者の知識をルールとして正しく理解する必要があります。

経験者の知識を機能にするために

f:id:techscore:20210210112647p:plain

経験者の知識を機能にするためには、次のような工程が必要です。

  1. 経験者の知識の理解
  2. コンピュータが理解できる定量的なルールの発見
  3. Synergy!の機能として実装可能に

ここで特に難しいのは、「コンピュータが理解できる定量的なルールの発見」です。経験者の知識は複雑で定量的なルールの発見は困難です。例えば、メール詳細の特徴について、どんな件名・配信時間がいいのか、それが開封/クリック率といった効果へどれだけ貢献するのか、なんとなく説明できるものの、定量的なルールまで落とし込むことは難しいと考えられます。特に、ルールは定量的なものでないと機能としてコンピュータの行動の指標にできません。それゆえ、経験者の知識をルール化する手法が必要となります。

f:id:techscore:20210210112701p:plain

経験者の知識のルール化を実現する手法として、機械学習が挙げられます。機械学習とは、コンピュータが大量のデータを学習し分類・予測などに利用する技術です。 また、定量的なルールを自動的に構築することができます。定量的なルールを発見することで、ルールを定性的に理解できないコンピュータでも、ルールに基づいた行動の再現が可能になります。 そして、人間が潜在的に加味しているが、説明できない隠れたルールを発見することもできます。これを定量的に発見することにより優れた分類・予測が可能になります。つまり、データと機械学習により経験者の知識をルール化することができます。

f:id:techscore:20210210112716p:plain

例えば、メールの開封有無を予測することができれば、事前に対策をとることができます。メールの開封有無を予測するためには、「いつ、誰に、どんな内容で配信されたか」といった特徴とメールの開封有無の関係をルール化する必要があります。このようなルールを算出するためのデータとして、実際に配信されたメール群(配信履歴)、特にメールの特徴とメールの開封有無が考えられます。つまり、データと機械学習により「いつ、誰にどんな内容でメールを配信すれば開封されやすいか?」という経験者の知識のルールを発見できます。

f:id:techscore:20210210112728p:plain

まとめると、マーケティングの民主化とは、作業の型化・自動化、そして知識の格差の緩和を通じて、誰もが(どんな企業でも)高品質なマーケティングを実行可能にすることです。現状、CRMを機能として誰もが利用可能にしているという点において、Synergy!、そしてシナジーマーケティングはマーケティングの民主化に貢献しています。今後、それをさらに進めるための次のステップとして、機械学習を活用した経験者の知識のルール化・機能化することを提案しました。



フィードバックを糧に

再び馬場です。上記で紹介した桂川の発表は、当日も「機械学習のサービス実装のイメージが湧いた」と好評でした。オンラインで開催した共有会でしたが、技術を扱う部署からお客様に直接関わる部署などさまざまな部署から50人ほど参加した上、後日公開した録画を視聴した、という人もおり、この分野への関心と期待を感じました。 ただ、我々なりに丁寧に説明したつもりだったのですが、「難しかった」という意見も少なくありませんでした。アイディアを引き出すには、データサイエンスで何ができるのか、できないのかを理解する(してもらう)ことが非常に重要です。啓蒙活動も続けていかなければいけないと感じました。

今後

当社は今年、ビジョンとミッションをリニューアルしました。

VISION 人と企業が、惹かれ合う世の中へ。
MISSION Create Synergy with FAN

デジタルマーケティングでファンとの相乗効果(Synergy) を創る、というミッションを実現するには、データの活用が不可欠で、データサイエンス分科会はその技術的基盤となりたいと考えています。今年もよろしくお願いいたします。