企業間エンジニア交換留学として株式会社イルグルム様に留学してきました。 この記事では、留学の経緯や内容、そこで得た気付きを紹介します。
学生時代から日常的に Linux を愛用。気がついたら Linux 歴が 25年を越えていました。好きなディストリビューションは Debian。
妻と猫との三人暮らし。趣味はマラソンとトレイルランニングですが、コロナ禍で家にいることが多くなったのでピアノを習い始めました。
企業間エンジニア交換留学
当社 CTO の
- サービス・プロダクトを進化させられる組織になるためには、今もっている知識・経験を整理し習得するだけでは不十分
- まだ知らないもの・出会ってないものに触れる「探索」のプロセスが必要である
- 探索に必要なのは「弱いつながり」である
という思いから、人との出会い・交流を促すため、株式会社イルグルム様との企業間エンジニア交換留学を実施することになりました。
実は、株式会社イルグルム様とは 2018年に交換留学を実施しています(こちら、こちら)。このときはアプリケーションエンジニアが留学したということもあり、今回はインフラエンジニアである私に白羽の矢が立ちました。私は転職経験がなく、他社のインフラエンジニアがどのように働いていらっしゃるのか興味もあったので、留学にチャレンジしてみることにしました。
留学内容
留学の受け入れ先は「みらい基盤課」です。株式会社イルグルム様の主力プロダクトであるアドエビスをインフラ面で支えていらっしゃる部署です。
留学期間は1週間。初日はオフィスに出社したのですが、コロナ禍ということもあり翌日からは完全リモートでの留学となりました。
短期間で具体的な成果を出すのは難しいことから、活動はミーティングがメインでした。半分の時間がミーティング、残りの時間はミーティングのためのインプットや1日の活動の振り返りに充てました。
参加させていただいたミーティングは以下のとおりです。
- 部門やプロジェクトの定例ミーティング
- みらい基盤課メンバーとの 1on1
- みらい基盤課課長との 1日の振り返り 1on1(毎日)
- アドエビスのシステム概要や運用業務に関するレクチャ
- みらい基盤課の課題に関する意見交換
私はあまり人と話さない質なので、この一週間で半年分くらいの会話をしたのではないかと思います。
留学で得た気付き
以下、留学で得た気付きを思いつくままに挙げていきます。
研修資料の充実
まず、研修資料がよくできていて分かりやすいことに感心しました。初日の半日ほどでアドエビスのシステムについて理解できました(ダニング=クルーガー効果かもしれませんが、早い段階で全体像が把握できたと思えるのはいいですね)。聞くところによると、新入社員向け資料整備プロジェクトを立ち上げてかなりの工数をさかれたとのこと、その後もプロジェクトメンバーを入れ替えながら更新されているとのことで、大いに見習うべきと思いました。
運用業務の効率
次に、運用の定常業務にかけている工数が当社の 1/5 程度であることに驚きました。システム規模は大差ないし、運用定常業務の定義が大きく異なるわけでもなさそうなので、どこに違いがあるのか関心を持ちました。この差を説明するには足りないのですが、当社と異なる点としては以下が浮かび上がりました。
- 数年かけて運用業務を整理し、手順を作って定常業務化されてきたこと
- 定常業務の時間枠を決めていること
- 割り切って廃止した業務があること
我々の状況を振り返ってみるに、慣習で続いている業務や歴史の積み重ねで重厚になったプロセスや手順が足枷になっているのではないかと思います。これまでも業務を見直してきましたが、もう一歩踏み込んでみてもよいかなと思いました。
セキュリティエンジニア
みらい基盤課にはセキュリティ系の技術コミュニティで活動されているセキュリティエンジニアの方がいらっしゃいます。当社では WAF の導入・運用に苦労してきたので、どうすべきだったのか相談に乗っていただきました。1on1 の時間を全部使ってセキュリティに取り組むスタンスからはじめて、いろいろ教えていただきました。
その他
開発部門の全体ミーティングでは、各部署からの報告でそれぞれの部署メンバーの持ち回りで発表しているのが印象的でした。他部署のメンバーを知る機会になるのでよい方法だと思いました。また、ファシリテータの方の性格によるのかもしれませんが、和気藹々とした雰囲気のよいミーティングでした。
組織や業務上の課題についての意見交換では、当社でも同様に抱えている課題ばかりで共感しきりでした。 我々の経験も踏まえて話しましたが、やはり同じところに悩みがありますね。
留学で残せたかもしれないもの
逆に、留学中の対話の中でいくつか興味を持ってもらえたのではないかと思えることがあるので挙げておきます。
感想戦
将棋などでは対局後に指し手を再現しながら検討する感想戦というのがあります。この感想戦になぞらえて、技術的な観点から障害対応を振り返って経験の共有と学びにするという活動をしていました。ネーミングが前向きであること、反省ではなく技術を検討するための振り返りであることから技術者にとって取り組みやすい活動だったと思います。過去形になっているのは、日々の業務に追われてしばらく実施していないためです。この反省も踏まえて、資料の準備に時間をかけることなくライトな形で実施するのがよいこともあわせて紹介しました。
Reunir
Reunir は当社独自のサーバ情報収集フレームワークです。名前はスペイン語で「集める」という意味の動詞からつけました。 各サーバに配備した Agent がサーバの情報(OS、各種リソース、導入済パッケージや稼働しているサービスなどの情報)を定期的に収集して Elasticsearch に投入します。Redash からその Elasticsearch を検索することにより集めた情報を利用します。脆弱性対応などで対象となるサーバを割り出すのに膨大な工数がかかった過去の苦い経験から作りました。先日の dnsmasq における「DNSpooq」脆弱性 の対応でも活躍してくれました。
技術力とは何か
とある方との 1on1 で「技術力とは何だと思うか」という話題になりました。 私の回答は「技術力とは想像力である」です。
私自身、何かに失敗して「そこが問題になるとは気付けなかった。技術力がないな」と思い知らされることがあります。技術的にヤバそうな匂いを嗅ぎ分け、最善手を見出すことができるのが「技術力がある」ということなんだと思います。技術力とは何かを具体的に説明しているわけではないのですが、このように応用できる形で身につけてこその技術力だと思っています。
参加してみて
人と話すことが苦手でミーティング三昧は辛いだろうなと覚悟していたのですが、留学に関わってくださったみなさんがフレンドリーで想像していた以上に対話できました。当社と似ている点、異なる点、いろいろ勉強になりました。有意義で貴重な経験をさせていただきました。
唯一心残りなのは、ある方との 1on1。事前にいただいたお題が「新人なので、これからのインフラエンジニアに必要なことを知りたい」だったので「それはプログラミングです!」という回答を用意して臨んだら、その方がバリバリのプログラマーだったのには焦りました。頭がまっ白になってしまい、その後、何を話したのかも覚えていません。相手の方にとってあまり有意義な 1on1 にならなかったのではないかなと思います。申し訳なかったです。もしも、次に機会があればもう少しマシなお話しができればと思います。
コロナ禍でほとんどリモートでの留学でしたが、「弱いつながり」だけど確かなつながりを持つことができました。これを機にさらにつながりを増やしていければと思います。
さいごに
シナジーマーケティングではクラウド基盤エンジニアを募集しています。「面白そう」と思った方、まずは話を聞きたいという方は、こちらからご応募ください。