これを書いている今、年始です。所信表明シーズンですね。
私はen-chantのプロダクトマネジメントを2年担当し、その後FAVTOWNのプロダクトマネジメントに携わっています。この機会に、大切にしていることや考えていることを振り返り、改めて新規事業を推進していくときのお気持ち表明を行いたいと思います。最後までお付き合いいただけますと幸いです。
本題のお気持ちに入る前に
本題のお気持ちに入る前に、前提となる新規事業の特徴とお気持ちが適応される状況について説明します。
前提その1 : 新規事業の特徴(弊社の場合も含む)
- 不確実性が高い。体感200%
- 新規事業の立ち上げ時の不確実性はほぼ100%です。個人的には200%にも感じられることがあります。この不確実性を下げ、事業を前進させるためには、仮説検証を継続的に行うことが極めて重要です。
- やりたいことがたくさんある
- 解決したい社会課題、作りたい世界、夢はたくさんあります。もちろん儲けたい。しかし、何に集中し、どの課題が優先されるべきか、それはなぜなのかを考え続けないと行動の軸がブレます。
- やるべきこともたくさんある
- システムのセキュリティ対策、契約書の整備、プライバシーポリシーの整備、はたまたお客様との約束など、やるべきことは多岐に渡ります。ただし目の前のTODOだけをこなしても事業は前進しません。仕事の重要度や想定工数を把握し、優先順位を明確にしておかないと常に目の前の作業に追われる状況になり、本当にやりたいことができなくなります。
- 事業の関係者が多い
- 弊社の新規事業ではメディア事業を展開しようとしているので、協力企業や団体、ユーザー、スポーツ事業ではチーム、地域創生事業では自治体など、関係者が多岐にわたります。
- 日々状況が変わる
- 特に関係者の多いメディア事業の場合、企業のOKは出たけど別の団体でNG、先方都合で止まる、逆に早まる、など状況変化が頻繁に発生します。
前提その2 : このお気持ちが適応される状況
- 新規事業立ち上げのミニマムチームである、ビジネス・開発・デザインの3名で運営している時は、阿吽の呼吸やハイコンテクストコミュニケーションで賄えると考えています。コミュニケーションを密にとって、3名のストレスのないやり方でやるのが良いです。しかし、関係者が増えるにつれてお気持ちは強く意識しながら運営しないと、各メンバーの力を最大限に発揮することができず、結果事業の前進スピードが落ちます。
- 新規事業におけるプロダクトマネージャーの役割は未だ曖昧であると感じています。現状私個人の責任範囲は、FAVTOWNのtoC領域の収益化を目指し、施策を考え実行していく立場であり、そのプロセスと結果、次の判断に責任を持っています。なのでそのためにはなんでもやるぜという役割です。(もちろん適任者がいれば全幅の信頼を置いて任せます。)
新規事業のプロダクトマネジメントで大切にしている4つのお気持ち
ここからが本題です。
その1. 施策や作業の目的を言語化すること。そしてそれを共有し、チームの認識を合わせる努力をすること
チームメンバーが増えたり、実行段階に入ると、目的が曖昧になりがちです。
例えばある企画を進め、KPIとしてCV100件の目標を設定するとしましょう。その時に、その100件がなぜ必要で、どのような価値を持つのかの定義が後回しになりがちです。
「Aという特徴を持った人たちに刺さればこれは価値があるといえる」という仮説を検証するために「Aな人たちをターゲットに訴求をして100件獲得を目指しましょう」というような目的と検証方法を認識しておかないと、このままでは100件いかないという状況になった時、Aの人への検証ができないままBの層にも広げてしまう、ということが起こってしまいます。結果、KPIを達成したとしても仮説検証ができていないまま終わってしまいます。そうなると事業の不確実性はいつまで経っても下がりません。行動の目的と方法を共有し、認識を合わせることが不可欠です。
外部要因でやりたかった検証が難しくなってしまった場合も、初期の仮説と比較して何ができるのか、できないのかを整理し、状況に柔軟に対応しながら進むことが重要です。成果が得られた場合でも、なぜそれが成功したのか、失敗した場合でも何が問題だったのかを徹底的に振り返り、明確な学びを得ることが必要です。
言語化だけではなく、それをしっかり見える化し、チームの認識を合わせる努力をし続けることも大事です。
具体的には目的と仮説を整理した資料を作って随時共有アップデートしたり、
事業全体の現在地をわかりやすく把握するために、こんな図(マインドマップ)を作ったり、
※本来縦長のものを回転してます
アクションの相関関係をツリーで表現したり
この辺は試行錯誤を繰り返しながらトライ中です。
つらつら書きましたがとはいえ、やってみないとわからないよねつべこべ言わずにやらんかい、が新規事業であるという一面もあります。ですがこれは逃げだと私は考えています。やってみないとわからないは当然ありますが、何をやってみないとわからないのか、それを明確にした上でないとやってみたけどわからないになります。やってみたけどわからないが一番よろしくない。
目的の言語化から逃げない! 得意ではないけど、人(&AI)に頼りながら頑張るのだ。
その2. スピード、コストをかけずに明確にわかることが価値が高い。明確な結果が出る仮説検証をすることが大事
仮説検証や施策の優先度を迷った時はスピード、コストがなるべく早く安く済むものからやっていくのが良いと考えています。その上で明確に結果が出るような検証方法を取るべきだと考えています。
それでもここはコストも時間もかけないとできない、となるならより目的をより具体的に明確化させることが必要です。どの事業仮説に基づくものなのか、その事業仮説の重要度など、本当に今やるべきか、は言語化しておかないと振り返れなくなります。
その3. 振り返る。そして記録に残す
ふわっとした感想ではなく、何が成功し、何が失敗したのかを具体的に洗い出すことが必要です。仮説がどの程度証明されたのか、新たな気づきや発見は何かをしっかりと整理し、残す努力が必要です。
特に今後のAI時代においては、残した文章が有益な情報となるでしょう。
手間がかかるかもしれませんが、徹底して振り返りと記録を行うことで、仮説検証の精度が向上します。
正直面倒だと思うこともありました。徹底できない時もありました。しかしここがないとチームの認識が曖昧なまま進み、結果生産性は上がりません。
振り返り方としてはこんな感じのシートを用意したり
前述した目的整理資料の最後に結果を明記したり
ここも効率的に価値ある施策/仮説検証ができるように試行錯誤中です。
その4. 組織の成長に還元する
新たな挑戦をした時、同じ問題でつまづく後続のメンバーがいないように、新規事業のプロセス化を進めることで、より挑戦しやすい環境を作りたいと考えてます。
これは後続だけでなく、自分自身のためでもあります。
プロセス化の過程で悩み事の相談もするし、同僚の知見も知れる。仲間も増やしたい。
自分自身のスキルアップにも繋がり、組織への貢献となります。自らの知見を増やし、仲間を増やすことで、個人と組織の両方に良い影響を与えることが期待できます。
それが事業成功への道に繋がると考えています。
具体的には今まで書いたことをテンプレート的に使えるものにしたり、前述の目的整理資料をレビューしてもらったりして、盲目的になってないか、手段が目的化してないか、第三者目線を入れながら自身を振り返り、事業と組織に還元する機会を設けています。
▼大事にしていること (参考 : リーンマネジメントの教科書)
▼テンプレート
最後に
正直、このお気持ちに自信が持てない時もあります。こんなことやって意味あるのかな?と思うことも、ぶっちゃけ、あります。
しかし孤独にPdMをやっているわけではありません。幸い優秀な同僚がたくさんいます。また生成AIという強い味方もいます。言語化から逃げない、と強く書きましたが、ここは生成AI全部やってくれたらええやん、とも考えてます。今まで事業で積んだ経験とこれからやろうとしていることを生成AIに教えて、目的/仮説/アイディア/結果検証まで出してくれたらこんなありがたいことはないです。本来やりたいことに集中できる。
(このブログもだいぶ生成AIに助けてもらってます)
俗に成功は千に三つと言われる新規事業、まさに失敗やうまくいかないことの連続です。
しかし失敗を失敗で終わらせられるほど人生は長くありません。失敗を失敗で終わらせないために、お気持ちを強く持ち、自分自身や組織に還元し、良い失敗をたくさんできる土壌を作ることが成功への近道であると信じて、2024年もたくさん挑戦していきたいと思います。