MVP(Minimum Viable Product)開発とは、必要最小限の価値を提供するプロダクト(製品)を仮説に基づいて作成・提供し、ユーザーからのフィードバックを元に価値を検証しながらプロダクトの改善を繰り返していく開発手法です。
出典:MVP開発とは?新規事業立ち上げの参考手法について押さえたい基本を解説
当社でも、よりスピーディーかつお客様に受け入れられる機能を開発&リリースをしていくために、新機能についてはMVP開発を実施しています。私はPMMとしてMVP開発の際に、お客様や営業とコミュニケーションをする役割です。今回は私が携わった「SMS配信機能」のMVP開発施策についてご紹介します。
なぜ「SMS配信機能」を選んだの?
SMS配信をMVP開発しようと思った理由は以下です。
- 当社はお客様とのコミュニケーションをずっと支援してきており、
いくつかの機能を比較した際に、新しいメッセージングチャネルの企画は優先度が高かった - これまでに当社のサービスに個別に追加開発する方法で、利用された実績があった
こういった理由から、企画メンバーと一緒にプロダクトオーナーに提案し、SMS配信機能をMVP開発の対象として進めることが決まりました。まずは、「機能搭載したら利用してくれるお客様が増えるのか」という仮説を検証するため、トライアル利用を模索することにしました。
トライアル利用とは、最低限の機能のみを提供して、お客様に実際に利用(今回はSMS配信)してもらうことで、その施策の結果を振り返り、本当に機能として価値があるかを検証するフェーズです。
トライアル利用の提案
トライアル利用の提案を進めていく上で、まずは当社として「SMS配信を利用したどのようなユースケースが理想か」を社内で協議しました。SMSはかなりPUSH力の強いチャネルなので、ガンガンとメッセージを送るコミュニケーションではなく、受信者を安心させるようなユースケースがいいのではないかと仮説を立てました。例えば、子どもの習い事の雨天時の中止連絡、海外旅行者向けのパスポート期限の確認など、思いつく限りのユースケースを洗い出しました。
- リマインド
年間会員の会員更新期限のリマインド - 来場促進
スポーツクラブや不動産のモデルルームなどへの来場促進 - 災害時の安否確認
災害時にSMSを配信し、当社サービスのフォームに安否状況を登録 - 小さな子どもがいる親をターゲットとしたプロモーション
メールは確認されないという課題があり、保護者向けのプロモーションに利用
上記のようなユースケースで利用してくれそうな業界のお客様数社に活用イメージをお伝えしてトライアル利用をご提案しましたが、SMS配信よりも他に優先度が高いものがあったり、トライアル施策後の本番運用が現実的ではないと判断されたりと、すぐにでも試せるコンディションのお客様はいませんでした。(トライアル利用では、なるべくお客様のご負担が少なくなるよう、検証に必要な当社の開発工数やシステムの設定工数は当社持ちで対応する提案をしています。一部SMS配信の実費のみご負担いただく想定で費用を算出しました。)
提案している中で一部のお客様に、SMSはこれまでに迷惑メールが多く送られていた過去があるため、あまりよい印象を持っていない方もいました。私たちはこれまでにも実際にサービスを提供した実績があり、業界によっては有効なチャネルとして活用されているため、そのようなご意見をいただくのがとても新鮮でした。
当初、私たちはSMSの特徴から、お客様を安心させるようなユースケースを想定しましたが、実際のSMSのイメージからかけ離れていたことが、お客様に提案をしてみてわかりました。SMSを機能として自社サービスに搭載する際には、当社がSMSをメッセージングチャネルとしてどう捉えているか、利用してもらうことでどのような体験を生み出したいのかを考えなくてはいけません。自社サービスがただ多機能になればいいということではなく、各機能がどのようなイメージを持たれていて、それに対して自社がどう思っているか、どう思ってもらいたいかも考えていかないといけないのだなと感じた出来事でした。
次回はもっとこうする!施策メンバーとの振り返り
今回はトライアル利用を20社以上提案し、いろいろなユースケースをヒアリングすることができました。活用方法は無限に広がるものの、模索が長期に渡ったにもかかわらず、本当に利用してもらえるかどうかを検証しきれませんでした。
そもそもMVP開発のトライアル利用提案をしたのが初めてだったため、何社に提案し、検証はどれくらいの数が必要で、どのようなフィードバックがあれば本機能として実装するのか、というルールが曖昧でした。曖昧だったことで、スピードを重視していたはずのMVP開発が長期化してしまいました。機能によって試す量や内容はもちろん変わりますが、今後は各機能でいつまでにいくつの仮説を検証するのか、どのような評価であれば実装する(または見送る)のかを明確にしてからスタートさせるルールを策定しました。
SMS配信機能は今回は機能化することはできませんでしたが、上述したようなユースケースの考案・提案・その機能そのもののイメージの確認など必要な学びを多く得ることができました。今後も新機能開発では、スピーディーに検証しお客様にご利用いただける機能の実装にトライし続けます。