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エンジニアコミュニティORION×シナジーマーケティング共催「実運用での失敗と学びについて」LT会レポート

2025年8月29日(金)、シナジーマーケティング株式会社の大阪オフィス(堂島アバンザ21F)にて、エンジニアコミュニティ【ORION】との共催で「実運用での失敗と学びについて」をテーマとしたLT会が開催されました。

このイベントは、華やかな成功事例の裏にある「うまくいかなかった話」や、そこから得られたリアルな学びを共有する場として企画されたもの。第一線で活躍する登壇者たちが、これまであまり語られなかった「しくじり」体験を赤裸々に語り、参加者が未来の地雷を回避するヒントを得られる貴重な機会となりました。

ORIONコミュニティについて

ORIONは、より多くのエンジニアが社外に出て交流し、新しい刺激を受け、挑戦を続けられるような世界を目指して活動しているエンジニアコミュニティです。仕事、学び、遊びの3つのアプローチで活動を展開しており、東京から始まった活動は大阪にも拡大し、今後は各地域での活動を活発にしながら全国に広げていく予定です。

LTセッション

LT① 「落ちるよ落ちるよサーバーは落ちる」- シナジーマーケティング株式会社 末廣さん

15年ほど前のDB障害事例について語ってくれた末廣さん。当時、DBの子プロセスが異常終了する原因不明の事象に見舞われていました。1日に数回ランダムに発生するが、タイミングは0分ちょうどという謎の状態でした。

調査の結果、ベンダーのRAID管理ソフトのバグが原因であることが判明しました。管理ソフト付属のツールでアクセスすると管理ソフトの子プロセスが生成され、この子プロセスにSIGIO(シグナル29)が定期的に送信されていました。ツールの利用を終了するとその子プロセスは終了するのですが、SIGIOの送信は続いていました。DBの子プロセスがそのプロセスIDで生成されると、SIGIOが送りつけられて落ちるという複雑な事象でした。

学び

  • 原因が分からなくても、事象を把握すれば対策は打てる
  • ログをよく見るべき - 最初からログをきちんと見ていれば、より早い段階で問題に対処できた
  • ログを読むことは成長に繋がる - アプリの理解が深まる。ログ解析ツールを自作すればプログラミング言語の習得にもつながる

スライド

LT② 「オフショア開発での失敗と学び」- Netsujo株式会社・みやこでIT 飯田さん

2023年に京都で会社を立ち上げ、ITエンジニアコミュニティ「みやこでIT」を運営している飯田さん。ブロックチェーンスタートアップとして活動する中で経験したオフショア開発での失敗と学びを共有してくれました。

失敗と学び

  1. 「僕たちは食わず嫌いでした」 - オフショア開発を避けていたが、緊急案件をきっかけにベトナムのソフト会社と仕事をしてみたところ、良い結果が得られた
  2. 「仲間と仕事がしたい」 - 次の仕事ではうまくいかず、原因は相手の会社をよく知らず、会ったこともなかったから。2月にベトナムまで飛び、現地法人に会って交流を深めることで対面での交流の重要性を実感
  3. 「僕たちには壁がある」 - ベトナム人エンジニアとのコミュニケーションで「ニュアンスの違い」という壁に直面。この課題は、コュニケーションの壁が生じにくいタスクを切り分けてベトナム側に依頼する「エリア分け」で解決した。

LT③ 「シークレットキー流出の巻」- 株式会社ギフトパッド 田原さん

6年前、GitHubにシークレットキーをコミットしてしまった田原さんの体験談。1年後に「◯◯グリッド」というサービスから連絡が入り、お客様のAWSアカウントがロックされたとの連絡で事態が発覚しました。

復旧作業の困難さ

  • アカウントロックやキー使用停止の措置が取られた
  • キーの再発行は営業日でないとできず、週末だったためサポートからの返信も自動返信のみ
  • 一時的な対応として、AWSのSES(Simple Email Service)を使ってメールの送信方法を変更し、キーを置き換えることでなんとか対処

学び

  • シークレットキーを直に扱うのはもはや古い - マネージャーやロールベースでの権限管理など、より安全な方法を検討すべき
  • コードに秘密情報が埋め込まれない仕組み作りが必要
  • AIによるコードチェックの活用
  • 緊急時の対応フローや連絡体制の確認

LT④ 「エンジニア×電話対応で疲弊する運用チーム」- ココカラ勉強会 ジーコさん

「ココカラ勉強会」を主催するジーコさんは、予約管理系のSaaSアプリでの運用経験について語りました。過去にディレクターの急な産休をきっかけに、エンジニア全員で電話対応をせざるを得なくなった時期があったとのこと。その貴重な経験から得られた学びを共有してくれました。なお、現在は体制が見直され、この問題は解消済みだそうです。

電話対応での失敗と学び

  1. 「開発担当とは絶対に名乗らない」 - 開発者と名乗ると機能要望や納期の質問を受け、話がややこしくなる。カスタマーサポートとして対応する
  2. 「お客さんを信じすぎるな」 - 「システムが全く動かなくなった」という電話に対し、Wi-Fiの電源が切れているだけといったケースが多い
  3. 「システムを信じて進めろ」 - エンジニアはすぐにコードやDB、サーバーログを見に行ってしまうが、カスタマーサポートとしては「システムが動いている」前提で対応すべき

学び

1年以上電話対応が続くと、退職者が出る可能性がある一方で、カスタマーサポートのハブになれたことでマネージャーに昇格するという貴重な経験にもなりうる。

パネルディスカッション

ファシリテーターはORION運営のyamasawさん。パネリストはLT登壇者の末廣さん、田原啓介さん、そして特別参加の園田さんの3名。

データ基盤とシステム構築での落とし穴

DB障害のときに特に大変だったこと

  • 末廣さん: 最近はかなり改善されたが、昔はDBが落ちるとDBに依存する大量のアプリを片っ端から再起動してまわる必要があって大変だった
  • 田原さん: アクセス負荷による障害対応が難しく、コールセンターが鳴りやまない中でのアプリケーション改修は非常にハードな経験
  • 園田さん: オラクルからPostgreSQLへの移行で77兆行規模のデータベース処理に苦労した経験を共有。事前の負荷テストが十分でなかったことが、障害の一因になったと語りました。

インフラエンジニアの成長について

  • 末廣さん: 「障害の数だけ成長した」と感じる。痛い経験をすることで、知らなかった世界が見えるようになり、それが一番の勉強になった
  • 障害報告書を書いた経験は、インフラに関わる仕事での成長の証であり、責任ある仕事を任された指標の1つ

データ設計について

  • 田原さん: 新しいシステム構築では正規化が当然のように進められるが、アクセス頻度の高いテーブルでは逆正規化冗長化)を行うことで、システムの負担を軽減するケースもある

おわりに

今回のイベントでは、普段なかなか聞くことのできない「失敗談」を通じて、多くの学びと気づきを得ることができました。失敗は恥ずかしいものでなく、成長のための貴重な財産であることを改めて実感しました。

登壇者の皆様の率直な体験談と、そこから得られた学びは、参加者の皆様にとって「転ばぬ先の杖」となったのではないでしょうか。心理的安全性の高い環境で、日頃の苦労や悩みを共有できるコミュニティの価値を感じる素晴らしいイベントでした。

エンジニアコミュニティ【ORION】との共催でしたが、シナジーマーケティングでは定期的に「シナマケミートアップLT会」を開催しています。次回は9月24日(水)に開催予定です。詳細はconnpassで公開しますので、ぜひご参加ください!皆様とお会いできるのを楽しみにしています。

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hiraoku

暇があったらクライミングしているフロントエンドエンジニアです。

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