シナジーマーケティング主催のイベント「【第 1 回】シナマケミートアップ LT 会」を 3 月 26 日、本社大阪オフィス(大阪府大阪市)で開催しました。
同イベントは、テクノロジーとエンジニアリングの知識と経験を共有するために実施しました。佐々木 竜馬さんによる「ポケポケで考える直感的 UI」、道太郎さんの「IT 業界で働く私の心に響いた名言 5 選」、そして寺岡佑起さんによる「数百台のオンプレミスのサーバーを EKS への移行した話」について発表が行われました。
佐々木竜馬さんは、「Pokémon Trading Card Game Pocket」の事例を通して、直感的な UI デザインの原則を実践的に示し、ユーザーフレンドリーなインターフェースを作成する上でのアフォーダンスとシグニファイアの重要性を強調。道太郎さんの心に残る名言では、若手へのアドバイスから、デザイナーにとって多様な経験をすることの重要性まで、IT 業界で働くうえでの大切にしたい価値観について紹介しました。最後に、寺岡佑起さんによる シナジーマーケティングの AWS EKS への移行については、複雑なインフラストラクチャのプロジェクトの例をあげ、その過程における戦略や教訓を説明しました。
1. ポケポケで考える直感的 UI (佐々木 竜馬さん)
佐々木さんは、モバイルゲーム「ポケポケ」※ を具体的な事例として活用し、ユーザーインターフェース(UI)デザインの原則に焦点を当てて発表しました。このテーマに取り組むきっかけは、5 歳の長男が「ポケポケ」を直感的に操作している様子を観察したこと。「なぜ複雑な操作ができるのか?」という疑問から、UI デザインにおける直感性の鍵として、心理学用語である「アフォーダンス」と「シグニファイア」が、直感的な側面、UI デザインを理解する上で基本となるものだと考えるようになりました。
佐々木さんはまず、「アフォーダンス」を「目の前のものが何ができるかを認識するための知覚的な手がかり」と定義し、モノ自体が持つ「~できる」という可能性であると説明しました。一方、「シグニファイア」は、そのアフォーダンスをユーザーに伝え、複数ある選択肢の中から適切なアクションを促すための「ヒント」や「目印」であると解説しました。
「ポケポケ」の UI デザインでは、これらの概念が効果的に用いられています。例えば、バトル中に「使用可能なカードが光る」ことや、「カードをドラッグすると配置できる場所(フィールド)が光る」こと、「進化ポケモンをドラッグすると進化元のポケモンが光る」といった視覚的な演出は、シグニファイアにあたります。これらは、プレイヤーが次に何をすべきか、どの操作が可能かを直感的に理解する手助けとなります。
さらに、実行できるアクションがなくなると「番を終わる」ボタンのみが光るように、状況に応じてユーザーを適切に誘導する工夫がされている点も挙げられました。佐々木さんは、「こうしたデザインにより、次に何をすれば良いかが分かりやすくなっている」と述べました。
※ Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)について 「PokePoke」は、ポケモンカードゲームのデジタル版であるスマートフォンゲーム「Pokémon Trading Card Game Pocket」の公式日本語名。株式会社クリーチャーズと株式会社ディー・エヌ・エーが共同で開発し、株式会社ポケモンが配信したゲーム。2024 年 10 月 30 日に iOS と Android の両プラットフォーム向けに正式リリースされた。
2. IT 業界で働く私の心に響いた名言 5 選(道太郎さん)
道太郎さんは、自身が心に響いた名言 5 選を発表。「絶えず進化する IT 分野では継続的な学習が重要であり、『素直』に学ぶ謙虚さと迅速に行動する意欲の組み合わせが強力な基盤となる」と説明しました。
また、「イベントを企画するときなど、反応がないのが一番つらい。反応し、フィードバックを行うことは、個人のパフォーマンスの成果を認め、励ましあう感覚を育むだけでなく、信頼関係を築くことができる。より良いパフォーマンスと専門的な成長のために必要だ」と強調しました。
さらに、「デザイナーは自分が体験した以上の体験はデザインできない。個人的な経験の幅と深さによって大きく左右され、自身の専門分野外のことでも、多様な経験をすることで思考を豊かにすることができる」と熱弁しました。
3. 数百台のオンプレミスのサーバーを EKS への移行した話(寺岡 佑起さん)
寺岡佑起さんは、準備に 22 ヶ月、実際の移行プロセスにさらに 8 ヶ月を費やし、合計 30 ヶ月に及ぶ数百台のオンプレミスサーバーを AWS の Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)に移行した詳細な経緯を発表しました。 古いオンプレミスインフラストラクチャと新しい AWS 環境の両方が同時に稼働する並行運用期間が、初期移行後約 3 ヶ月間維持されました。この並行運用は、新しい環境の徹底的なテストと検証を可能にする重要な緩衝材として機能し、サービスの継続性を保証し、重大な問題が発生した場合のフォールバックオプションを提供しました。顧客への潜在的な影響を最小限に抑えること、必要に応じて変更をロールバックできること、インフラストラクチャの移行中にアプリケーションコードを変更しないことでアプリケーション層の安定性を維持するという基本原則を強調しました。
弊社がオンプレミスインフラストラクチャから AWS EKS への移行を決定した具体的な理由は、既存のオンプレミスサーバーの管理に関連する困難さと複雑さの増大でした。これには、頻繁なハードウェア障害への対応が含まれ、多くの場合、深夜のアラートが発生し、ハードウェアの交換のためにデータセンターへの緊急訪問が必要になりました。さらに、同社は、変動する需要に対応するためにリソースを効率的に割り当て、拡張することに継続的な困難を抱えていました。対照的に、AWS はインフラストラクチャ管理の簡素化とリソースの調達の容易さがあります。
さらに、プロジェクトは、インフラストラクチャの移行中にアプリケーションコードを変更しないことで、サービスの安定性を維持することを目的としていました。移行は、オンプレミス Kubernetes への初期移行、続いて AWS へのデータベースの移行という、構造化された 4 段階のアプローチに従いました。このデータベース移行フェーズは、AWS に既にデータベースをホストしている顧客と、オンプレミスにデータベースをホストしている顧客に対応するために戦略的に分割され、さまざまな顧客シナリオへの個別対応を示しています。その後のフェーズでは、AWS へのネットワークトラフィックの移行と、残りのデータベースの AWS 環境への移行が行われました。
寺岡さんは「最初のフェーズでは、オンプレミスインフラストラクチャに Kubernetes 環境を確立するために、19 ヶ月というかなりの期間を費やしました。この移行プロジェクトの成功の要因は、現実的なスケジュールとロードマップの策定により、チームが明確な期限とマイルストーンに向かって作業を進められたことです。達成可能な目標を設定することも、プロジェクトが順調に進むことを保証するために不可欠でした」とプロジェクトチームの専門知識と献身が成功に大きく貢献したこと、また技術的な課題を乗り越えるための熟練した人材の重要性について説明しました。
また、「AWS EKS への移行が成功した結果、特定のオンプレミス環境への依存度が低下し、必要に応じて新しい環境をセットアップすることが大幅に容易かつ迅速になった」と述べました。
執筆者感想
筆者はゲームをしません。なぜかというと、下手くそで、ゲームをするとストレスが溜まるからです。特に対戦ゲームなら尚更です。 佐々木さんのゲームに対する洞察力や探究心をゲームに向けるというのは、魅力的な関わり方だなと感心しました。見習いたいなと感じました。ゲームからも学ぶことはあるんだなぁと思い、ゲームを毛嫌いするのも、ほどほどにしないとですね。長男坊かわいいんだろうなぁ……
道太郎さんの名言は、とても心に響きました。特に筆者に響いた名言があるのですが、筆者の心の中にしまっておきます。また読者の皆さまとイベントでお会いした時に、ぜひ一緒に語り合いましょう。イベントご参加お待ちしております。
寺岡さんのオンプレミスから AWS への移行の話は、すごいの一言です。筆者は、移行時同じフロアで働いていました。寺岡さんはいつも忙しそうに、また楽しそうに働いていたのが印象的でした。他のイベントでこの移行の話を動画で見たのですが、今回初めて生で聞けて、改めて凄さを感じました。
今回のイベントを通じて、それぞれの専門分野への情熱と深い知識に触れることができ、大変刺激になりました。これからもこのようなイベントでの交流を大切に、お互いに学び合える環境を共に育んでいければと思います。
運営からのお礼とひとこと
今回のイベントは、シナマケミートアップ LT 会の第 1 回として実施しました。多くの方にご参加いただき、また登壇者の皆さまには、業務の合間を縫って準備いただき、貴重な知見を共有していただきました。心より感謝申し上げます。
ひとこと
馬場彩子:
道太郎さんのイベントがきっかけでエンジニアになり、当社にきてくれた岸本大河(入社 6 年目)が主体となって開催した初のイベントで、道太郎さんが登壇したこと、とてもエモかったです!
当日はすごく暖かい雰囲気で進行しました。コミュニティは、参加してくれるひともその場を作る一員なんだ、ありがたい、と実感しました。
同時に、何回も続けていっている諸先輩コミュニティへの尊敬の念が増しました!私たちも頑張りたい。
岸本大河:
初めての開催にあたり、参加者が集まるか、また有意義な時間を提供できるか不安でしたが、無事に開催することができ、多くの方々から「とても楽しかった」との声をいただき、嬉しく思っています。これからも継続して開催していこうと考えています。
寺岡佑起:
久々に登壇させていただきました。
今回の話は、AWS Summit 2022 の事例セッションで登壇した内容をベースにしていますが、あの時緊張しすぎてうまくしゃべれなかったのが、3年を経て緊張せずに話せるようになっていました。何事も経験が大事ですね。
シナマケミートアップ LT 会、継続開催しますので LT を経験してみたい方はお気軽にご連絡ください!もちろん参加も大歓迎です。
まとめ
今回は、UI に関する内容、IT 業界で仕事をしていくうえでの名言、オンプレミスから AWS への移行について発表を行いました。絶えず進化する IT 分野における継続的な学習や、エンジニアの交流の場を提供するため、今後もイベントを実施していきます。 第 2 回シナマケミートアップ LT 会は、 4 月 23 日に実施を予定しています。詳細は、【第2回】シナマケミートアップLT会 (2025/04/23 19:30〜)をご覧ください。
