TECHSCORE BLOG

クラウドCRMを提供するシナジーマーケティングのエンジニアブログです。

第 4 回シナマケミートアップ LT 会レポート - デジタルアドレス、AI エージェント、次世代暗号、SF 漫画まで!

2025 年 6 月 18 日、シナジーマーケティング株式会社が主催する「第 4 回シナマケミートアップ LT 会」が開催されました!IT やクリエイティブ分野に興味を持つ方々が集まり、知識や経験を共有し、新たな繋がりを築く交流の場として、今回も大いに盛り上がりました。お陰様でシナマケミートアップは参加者 50 名を達成し、運営一同、心より感謝申し上げます。

今回のミートアップでは、4 名の登壇者がそれぞれのテーマでライトニングトーク(LT)を繰り広げ、参加者は最新技術の動向から、思わずクスッと笑ってしまうユニークな視点まで、幅広いインサイトを得ることができました。

イベントのハッシュタグは「#シナマケ」でした。多くの皆様にリアルタイムで盛り上げていただき、ありがとうございました!

1. 5/26 発表のデジタルアドレスに爆速で対応してみた

最初の LT は、シナジーマーケティング株式会社でプロダクト開発部長を務める寺岡さんによる「デジタルアドレス」に関する発表でした。

寺岡さんはまず、デジタルアドレスとは何かを解説しました。これは日本郵便が 2024 年 5 月 26 日に発表した新サービスで、従来の郵便番号(都道府県市区町村町域レベルまで)に対し、マンション名や自宅の番地まで含んだ住所のすべてを 7 桁の英数字で識別できるというものです。既存の郵便番号とは重複しないよう先頭がアルファベットになるように設計されており、相互運用が可能である点も特徴です。

そして驚くべきは、シナジーマーケティングの「爆速対応」です。ニュース発表からわずか 1 週間後の 6 月 4 日には機能リリース、翌 5 日にはプレスリリースを行うという、通常 1 ヶ月程度かかる開発プロセスを大幅に短縮した事例が紹介されました。この迅速な対応は、社内 Slack での情報共有や、サポート部門との緊急調整によって実現したそうです。

機能実装のポイントとしては、デジタルアドレスをデータベースに直接保存せず、郵便番号と住所の入力補助としてのみ使用すると判断した点が挙げられました。また、デジタルアドレスの認知度がまだ低いことから、ユーザーが戸惑わないよう、既存の郵便番号入力欄にデジタルアドレスも入力できるように UI を統合したとのことです。

実装時の課題としては、「ライブバリデーション」と、特にスマートフォンのキーボード(input type="tel"を使用すると iPhone で英数字入力ができなくなる問題)との相性が悪かった点が挙げられ、現状では「泣き寝入り」状態とのことでした。

しかし、この迅速な対応の結果、シナジーマーケティングのサービスは日本郵便の公式ページで対応サービスとして紹介され、開発メンバーのモチベーション向上にも繋がったと述べられました。

2. Coding Agent の成り立ち

続いての LT は、シナジーマーケティング株式会社の西岡さんによる「Coding Agent の成り立ち」です。西岡さんは主に新規事業領域で、フロントエンド・バックエンド問わずコーディングを担当しており、最近は社内で LLM を活用したコーディング活動も行っているとのことです。

西岡さんはまず、「Coding Agent」を LLM を活用したコード生成、実行、デバッグを自動化するツールと定義し、それらを使ってコーディングを行うことを「Vibe Coding」と呼ぶと説明しました。

AI によるコーディング支援の進化は目覚ましく、2021 年の GitHub Copilot は「1 行のコード補完」が中心でした。2023 年末に登場した Copilot Edit は、「ファイル単位の編集」を行えるように進化しましたが、まだ人間の「副操縦士」の域を出ませんでした。

しかし、2025 年に入ってから「Agent」の概念が登場し、状況は一変しました。AI がコード調査、ライブラリ調査、実装、テスト、修正まで全ての開発プロセスを自動で行うようになったのです。この大きな変化は、AI にファイル作成・削除、CLI 操作、ファイル書き込みといった「権限を委譲」したことによるものだと西岡さんは強調しました。

これにより、人間の役割は「操縦士」から「管制塔」へと変化しました。要件定義、アーキテクチャ判断、最終レビューに人間が集中し、実際のコード作業は AI に任せることが可能になったのです。AI は、エラーログ分析、ライブラリドキュメント調査、既存コードの影響範囲調査など、人間が時間をかけていたタスクを圧倒的な速さでこなします。

西岡さん自身も、仕事のコードの約 95%を LLM に書かせていると語り、人間は適切なプロンプトやルールファイルをしっかり書くことに注力していると説明しました。

今後の展望として、人間は「何を作るのか」を決め、エージェントは「どう作るか」を実行するという役割分担で付き合っていくべきだと締めくくりました。

3. 次世代向け暗号技術とその応用

3 番目の LT は、大阪大学情報科学研究科特任研究員の田中篤さんによる「次世代向け暗号技術とその応用」です。田中さんの専門は共通鍵暗号の解析・設計とのこと。

暗号技術の目的は、情報のプライバシー保護だけでなく、改ざんの検知も含まれると説明されました。現代の暗号は「計算量的安全性」に依存しており、どんな暗号も総当たりすれば解読できるが、その計算量が何兆年もの時間を要するため、確率的に安全であるとされています。

現在、共通鍵暗号には大きく 2 つの種類が注目されていると述べました。

  • 大規模暗号: コンピューターやサーバー向けで、高い処理性能に合わせた高性能な暗号
  • 軽量暗号: 5G 時代に普及する IoT デバイス(医療機器、ドローンなど)向けで、CPU 性能が低いデバイスでも簡単な演算で最低限のパフォーマンスを出せる「コスパのいい暗号

用途(消費電力、回路面積、通信速度など)に応じて、最適なアルゴリズムが異なる点が課題とのことです。

これからの暗号技術は、必ずしもプライバシー保護が最優先ではないと指摘しました。例えば、ドローンの衝突回避のための「止まれ」という命令のように、プライバシーは守られなくても良いが、改ざんされてはいけないといったユースケースごとの最適な設計と適用方法が存在するとのこと。

また、量子コンピュータの実現は、従来の総当たり攻撃の計算量が現実的になりつつあるため、256 ビット以上の暗号化が必要になると強調しました。現在、多くのシステムで採用されている AES は未だ破られていない信頼性の高い暗号ですが、量子コンピュータの登場により 128 ビットでは不十分になる可能性があるため、最先端の暗号研究のテーマは 256 ビット以上のものにシフトしている。

そして、田中さん自身が開発した「ASURA」というアルゴリズムが、現在世界最速の共通鍵暗号であると発表しました。これは、256 ビット以上の安全性を持ち、既存のどの暗号よりも高速であることを要件として、世界の暗号学者たちが競争している分野で生まれたものです。

4. イケてるエンジニアにおすすめしたい SF 漫画

最後の LT は、Web デザイナーの道太郎さんによる、エンジニア向けのユニークな視点からの SF 漫画紹介でした。

道太郎さんは、「イケてるエンジニアに必要不可欠なもの」として「イケてるセリフ力」を挙げ、これを学べる SF 漫画として、寺沢武一先生の代表作「コブラ」を紹介しました。

主人公コブラの「イケてるセリフ回し」はネットでも話題になっているとのことで、いくつかのセリフをエンジニアが遭遇しがちなシーンに当てはめて紹介し、会場の笑いを誘いました。

  • 誰も拾わないタスクを拾う時に言いたいセリフ  →「いるさ、ここにひとりな
  • 頑張りすぎる若手エンジニアを労わる時にかけたいセリフ →「やめとけ。給料安いんだろ
  • 負荷テストができていない状況でシステムが落ちたらどうするかと不安がる後輩への返答 →「笑ってごまかすさ

これらのセリフは、コブラのクールな態度や行動と合わせて使うことで、より「イケてる」効果を発揮すると述べられました。

最後に、次回機会があれば「イケてる AI 使いこなし力」について、別の漫画を交えて紹介したいと締めくくり、会場は期待に包まれました。


懇親会でのさらなる交流

今回の LT 会も、最新のテクノロジー動向から、AI の進化がもたらす開発現場の変化、最先端の暗号技術、そしてエンジニアの心に響くユニークなエンターテイメントまで、非常に多岐にわたるテーマで構成され、参加者にとって実り多い時間となりました。

LT 終了後には懇親会も開催され、登壇者と参加者が活発に交流し、それぞれの興味を深める素晴らしい機会となりました。

シナジーマーケティング株式会社は、今後もこのようなミートアップを通じて、IT やクリエイティブ分野に携わる皆さんの交流と学びの場を提供してまいります。次回のイベントもどうぞお楽しみに!

hiraokuのプロフィール画像
hiraoku

暇があったらクライミングしているフロントエンドエンジニアです。

シナジーマーケティング株式会社では一緒に働く仲間を募集しています。