TECHSCORE BLOG

クラウドCRMを提供するシナジーマーケティングのエンジニアブログです。

ビジネスとITの狭間で - 分析ヒアリングシートの工夫と改善 -

3行で!

  • ビジネスメンバーからの「ふわっとした」分析依頼に対処するため、ヒアリングシートを作成し運用しました。
  • 初回ヒアリングと簡略化したヒアリングシートでミスを軽減しましたが、さらなる課題が残っています。
  • 目的を明確にし、効果的な分析を目指して継続的に改善を図っています。

困っていたこと

営業を含むビジネスメンバーから、「いつもとは異なる方法でクリック率を出してください」といった分析案件を依頼されることがよくあります。私たちのプロジェクトチームは営業・運用・開発を含む10人程度の小規模なもので、スピード感が求められる現場です。

時には、データソースを探すところから始める手間のかかる案件もありましたが、単純に集計の単位や期間を変えるだけの簡単なものもありました。しかし、通常業務の開発や保守と並行して分析タスクをこなすのは、優先順位の調整や頭の切り替えが必要で、なかなか骨が折れました。

さらに、「なぜその分析が必要なのか?」まで突き詰めて落とし込んでいなかったため、結果的に間違った分析をしてしまうこともありました。分析作業をやり直すと工数がさらにかかることになり、分析以外のタスクにも悪影響が出ます。これは「どげんかせんといかん!」と気づいたのです。

分析依頼ヒアリングシートの作成

分析の本来の目的を明らかにできていないことに課題があると考え、依頼内容の整理のためヒアリングシートを作成することにしました。 依頼者にヒアリングシート内に分析に必要な項目を記述してもらい、依頼内容の整理ができる状態を目指しました。 作成したものは以下になります。

項目 説明
依頼タイトル 依頼内容について1行でまとめます。 キャンペーン継続分析
期限 最短で7営業日後にします。 2024/06/28
分析結果を使用する相手 事実確認の分析は優先順位が下がるため、分析結果を使用する相手を想定します。 弊社役員
分析後のネクストアクション 2,3行の箇条書きにします。 - 前回のキャンペーン継続を判断します。
- 分析結果を材料として提案書に記載します。
期待する結果 分析の結果を想定します。 キャンペーン対象者数が前回同様のこと、また対象者のデモグラ分布が前回と同様の傾向にあることを期待します。
判断のしきい値 ネクストアクションにつながるための具体的な数値を考えます。 キャンペーン対象者が100万人以上いること、対象者のデモグラ分布で若年層の割合が10%未満であることが継続判断のしきい値です。

これを開発メンバーにレビューをしてもらい、必要なことがそろっており問題はないと判断していただきました。 しかし、残念ながらこのヒアリングシートの運用は見合わせました。 ビジネスメンバーの数人にこちらを見せ感触を確かめたところ、必要以上であるといった反応が返ってきたからです。 ビジネスメンバーの要件は以下でした。

  • 最終的には判断材料や提案書の材料としたいが、まずは数字が見たいです。
  • 出してもらった分析結果を一緒に見て検討や議論がしたいです。

適切な分析結果を出すだけではなく、企画や提案作成のサポートを求められていました。 サポートが不要なメンバーもいましたが全員ではありません。 全員がサポート不要になるようスキルアップできればスムーズになります。 しかし、このヒアリングシートで運用するとスムーズさがなくなりスピードが遅くなると考えました。 よって、上記ヒアリングシートを簡略化することにしました。 簡略化した内容に関しては、対面での初回ヒアリングを設けることにより解決することにしました。 簡略化したヒアリングシートは以下です。

項目 説明
分析後のネクストアクションは何になりますか? ネクストアクションを想定して解像度を上げましょう。 前回のキャンペーンを継続します。
もし期待する結果が出ないときはどうしますか? 期待する結果が出ない、またどちらとも取れる結果が出ることがあります。想定をして解像度を上げましょう。 前回のキャンペーンから内容を変更することを検討します。

実際に運用してみて

2つ目のヒアリングシートを用いて1年近く運用しました。振り返りを行います。

Good

  • 運用自体はスムーズに行われました。
  • 対面ヒアリングはヒアリングシートに記載のない内容を聞き出すのに効果的でした。

Bad

  • ネクストアクションが定まってない依頼であっても急ぎの案件は対応する必要がありました。
    • 「クライアントから言われているので早くほしい!」という依頼にはヒアリングをそこそこにして作業を行っていました。

Other

  • ネクストアクションや仮説の解像度を上げる訓練には結びついていませんでした。

さらなる課題

前出の分析案件のミスはヒアリングシートと初回ヒアリングで軽減されました。当初の目的は達成されましたが、上記Otherのようなさらなる課題が出てきました。しかし、必要かどうか悩む分析依頼はまだあります。前回は分析を行なって判断したから今回もとりあえず分析してほしい、判断のしきい値が明確にはないが数字が出てないと不安だから、といったものです。

目的を明確にして、その後のアクションに結びつく分析が望ましいです。文化的な側面はなかなか変えづらいですが、ヒアリングシートに徐々に改訂前の項目を足していき浸透を図ります。

「戦いはまだ始まったばかりだ!」

(完)

小林 正芳(コバヤシ マサヨシ)
バックエンドとデータ関連を担当しているエンジニアです。
先月にヘアドネーションのために30cm以上髪を切りました。


シナジーマーケティング株式会社では一緒に働く仲間を募集しています。