TECHSCORE BLOG

クラウドCRMを提供するシナジーマーケティングのエンジニアブログです。

変革の一歩:CTO Night & Dayの学び

AWS主催の「CTO Night & Day」に参加してから早くも1ヶ月が過ぎようとしています。このイベントでは、日常とは異なる環境で200人以上のCTO / VPoEの皆さんの知見に触れることができました。時間が経ち、これらの情報が私の中でようやく繋がり始め、「向き合ったのは変革だった」という理解に至りました。今回はその「変革」についてお話しします。

※ CTO Night & Day とは、スタートアップを中心とした企業における、CTO や VPoE などの技術経営者のための招待制カンファレンスです。2023年は 9月11日から13日の3日間、福岡で開催されました。

シナジーマーケティングのエンジニアリング「変革」

イベントでは、シナジーマーケティングが提供するクラウドCRM「Synergy!」のモダナイゼーションについてお話しする機会をいただきました。

2005年にローンチした「Synergy!」は、2020年から2022年にかけてソフトウェアのリライトプロジェクトやインフラのオンプレミスからAWSへの移行プロジェクトを進め、その過程でチームとシステムを変革しました。しかし、その「変革」は当初私が想定したよりもはるかに複雑で難しいものでした。

変革とは?

「変革」は以下のプロセスで進行します。

  1. TO BE(目指すべき状態)を設計
  2. AS IS(現状)を分析
  3. AS ISからTO BEへの移行計画を立てる

特に、1と2のフェーズでは、一度決定したことが固定されるわけではありません。深い理解を基に、1と2のフェーズを行き来しながら、両方の状態を改善していく必要があります。また、目標や現状が変われば、それに伴い計画も変更されます。変革は、これらのプロセスを同時並行で進行し、バランスを取りながら実施する作業です。

私たちの会社では、これまで新規開発のプロジェクトを手がけてきました。新規開発では、理想とする未来の姿「TO BE」を描き、そのビジョンに向かって一歩一歩進んでいく形をとっていました。このアプローチでは、クリアな目標を設定し、その目標に向かって計画的に進むことが中心となります。

しかし、「変革」や「Transformation」のプロジェクトでは、単に新しいものを作り出すだけではなく、既存のシステムやプロセス、そして思考を根本から見直し、改善や最適化を図る必要があります。これは新規開発とは異なり、既存のプロセスやシステムを深く理解し、それをどのように変えるべきかを検討するプロセスが求められます。これには、既存のものに対する詳細な分析や、変更による影響を考慮することが不可欠です。

この「変革」のアプローチは、新規開発の考え方や方法と大きく異なりました。既存のシステムやプロセスの変更は、予想外の困難や課題が多く、それに対応するためには従来とは異なる思考やアプローチが求められました。この新しい考え方やアプローチを身につけ、変革のプロジェクトを進めるのには一定の時間と努力が必要でした。

変革の痛みとその根底にある不安

「変革」は、そのプロセスと実行が難しいものです。しかし、最近感じるのは、その「変革」のプロセスだけではなく、深層には「本当に変わらなければならないのか」という微妙な不安や疑問が潜んでいるのではないかということです。

この不安感は、表面上は見えにくいものです。なぜなら、「変革」や「チャレンジ」は前向きでポジティブな言葉とされ、その反対、すなわち「変化を避ける」ことが否定的に捉えられがちだからです。しかし、私たちが「変革」を進める上で感じる痛みやストレス、そしてその背後にある不安や恐れは、無視できないリアルな感情です。

考えてみれば、これは当然のことかもしれません。私たちが今まで築いてきた「現状」は、知っている世界、安心できる領域です。それに対して「変革」は未知の領域への一歩であり、未知へのステップは、どこかで恐れや不安を感じるのは人間の本能です。そのため、「変革」への強いモチベーションを最初に持つことは難しいのかもしれません。

私たちがこれまで「変革」を進めてきた経験を振り返り、そのプロセスや結果から学んだことを活かし、これからも「変革」を進めていくためには、この「変革の痛み」と向き合い、理解し、受け入れることが必要だと感じました。

変革を進めるために必要なこと:未来を体験し、共有する

ここで大切なのは、「変わらなければならない」という外部からのプレッシャーや義務感ではなく、「変わりたい」という内発的な動機を見つけ、育てることです。それが「変革」の痛みを和らげ、前に進むエネルギーに変えてくれるからです。

そして、「変わりたい」と感じるためには、未来のビジョンを具体的にイメージし、その魅力や価値を体験することが必要です。

振り返ってみると、私たちはインフラのAWS移行やスクラム・ファンクションチームなど新しい開発スタイルを導入してきました。これらの変革において、例えばインフラの引っ越しは、先行して2年程度AWSで新機能を運用していましたし、スクラム的な「チームメンバーが率直に話しながら開発をすすめるスタイル」は、前職でそのような開発スタイルを経験した人が「まずはやってみようよ」と声をあげたことをきっかけにやってみたことでした。いずれも未来のビジョンをクリアに持っていた人たちがチームを牽引し、それを実現するための行動をとることで、成功につながりました。

翻って、CTO Night & Dayで得た知見も、未来像を想起させるものでした。例えば、世界で受け入れられているソフトウェアに触れたり、日本だけでなくゆくゆくは世界の市場を目指す経営者と出会えたり、多くのCTOとの対話を通じて、「変革の先」を少しでも覗くことができ、その先にある可能性やチャンスを感じることができました。これが、私の「変わりたい」という気持ちを一層強くしましたし、3年のSynergy!の変革の上に、ビジョンを掲げた上で丁寧にしっかり行動を積み重ねれば、もう一歩変えていくことができるのでは、とも感じました。

まだまだ身体感覚に落とし込めていないので、これから思考を深めていきたいと思います。いろいろ考えるきっかけになったとても良いイベントでした。運営の皆様、ありがとうございました!

馬場 彩子(ババ アヤコ)
最高技術責任者。2023年4月より取締役。すきなものはビール🍻とカニ🦀、といいつづけていたら、役員の就任時にカニをごちそうしてもらえたので、これからも積極的にいいつづけます。継続は力なり。


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