宮垣 祐介(ミヤガキ ユウスケ)
プロダクトと顧客の間を埋め、課題を解決するために、チームとしてどのような取り組みを実施したか。 プロダクトフィードバックループに関する話です。
はじめに
弊社では、2020年度よりSynergy!のモダナイズプロジェクト(名称:NEWT)が進行中です。 私はSynergy!の数ある機能のうち「データベース機能」部分のPMを担っています。 「データベース機能」のプロジェクトでは、旧機能のモダナイズに加えて旧機能自体の廃止もスコープとしており、完遂に向けて取り組んでいるところです。
プロジェクトを進めていく中では様々な課題が発生しますが、 今回は「ユーザーに新機能をいかに利用してもらうか」という課題にフォーカスし、解消に取り組んだ施策の内容になります。
どういった課題か
モダナイズでは、既存機能を新しく作り変えていくことになりますが、 一度のリリースで全てを置き換えるような方法は採用せず、段階的に機能リリースを行う方法を選択しています。
前者の方法では既存ユーザーの学習コストや運用に多大な影響を与えるため、後者を選択しました。
例えば「データベース」にはデータ検索機能があるのですが、
- 新しいデータ検索機能(2021/8リリース済)
- 旧来のデータ検索機能
を切り替えができる状態でリリースしています。
そして、最終的には「旧来のデータ検索機能」を廃止するというような計画となっています。 (※2023年度の前半頃を予定)
現在、まさに過渡期の状態です。
プロジェクトメンバーの思いとしては、
- 早く新機能を利用して慣れてほしい
- 使いにくいところや課題があればFBが欲しい
というような思いがありますので、「新機能への移行率」をKPIに定め移行率をウォッチしています。
しかし、なかなか「新機能への移行率」が期待した数字まで上がらず、何か有効な手は打てないかと課題を感じている状態でした。
課題解決のアイデア
そういった状況の中、同プロジェクトのPMMとデザイナー・エンジニアが自主的に検討会を設け
「ユーザーが旧来のデータ検索機能に戻す操作をした瞬間に、『今の状況を教えてください』というようなアンケートをとることができれば、移行障壁となっている問題のヒントが得られるのではないだろうか」
というアイデアを出してくれました。
利用状況データから新機能がある程度利用されていることは分かっていましたので、 「新機能への移行率」が伸びないということは、「新機能を使ってみたが旧機能に切り替えたユーザー」が多く存在するということ。 その行動理由を具体的に知ることができれば、それに対応する施策を検討・実施できる といった考えです。
早速、アンケート機能の検証を以下のような役割で開始し、次のリリースタイミングで導入しました。
- PMM :アンケート項目の検討
- デザイナー:アンケートデザインの検討
- エンジニア:アンケート取得の仕組みの技術検証
※こんなイメ―ジのコミュニケーションが行われていた
アンケート結果の分析からの施策
このアンケート機能をリリースしたのは4月中旬なのですが、リリースから約2カ月たった現在、 200を超える回答をいただくことができています。
※このようなアンケート
回答データを分析した結果、約7割程度の方が
- 「使い方がわからなかった」
- 「旧バージョンの方が使いやすい」
を選択されていることが分かりました。
新しいデータ検索機能ではUIを刷新しており、かつ、画面遷移を伴わないような構成となっています。 (旧来のデータ検索機能はウィザード形式となっている)
ユーザーの学習コストが一定程度必要になることからこの回答が伸びると想定していましたが、想定よりも回答数が多い状態です。 新機能に関するサポートページも準備済みであったのですが、それもあまり効果を発揮していない様子でした。
ここの改善に力を入れれば、効果があるはずだと仮定し以下の施策を実施しました。
- 「新しいデータ検索機能の使い方案内動画」を作成し、新しいデータ検索機能からの導線を追加
- Synergy!トップ画面にサポートページを掲載し、新しいデータ検索機能の利用をフォロー
- お客様と会話する機会の多い社内(営業向け)の情報展開を強化
現状、移行率が明らかに向上するといった効果はあらわれていませんが、 このような施策を試行錯誤しながら実施し、ユーザーの新機能利用をサポートしていくことが大事だと考えています。
最後に
また今回はフリーコメントで約20件ほどの回答をいただきました。 このように、直接プロダクト開発陣がお客様の声を集める仕組みが出来たことで、フィードバックループを生み出せていると考えています。
Synergy!は BtoBプロダクトであるため、こういったアンケート施策を実施してもあまり回答が集まらないのではないかと私自身、懐疑的に考えているところがあったのですが、予想を裏切る形となってくれました。
各々の役割の枠にとらわれずに、ユーザーのためにできることを必死で考え実行できるメンバー達とプロジェクトを進めることができ非常にうれしく思っています。