検索時間というコスト
インターネット上で情報収集するのが当たり前になってから久しいですが、情報過多ゆえに調べものに多くの時間を費やしている人も多いのではないでしょうか。
私も調べものには時間をかけるほうで、ある程度納得するまでは検索キーワードを変えながら100〜1000件くらいまでは検索結果を見てしまい、1件30秒で見終わるとしても50〜500分なので、思い返せば大変なコストを払っていました。
公式サイトがあるような業務関連ではあまり迷走しないのですが、個人的な調べもので例えば医療系の論文や治療ガイドラインを見ることがあり、たどり着いた先で読み解く時間も必要になってきます。
ChatGPTが出てきてからその便利さにユーザー数も増えているようなので、今回は検索エンジンに頼りっきりな私が検索時間の短縮や利便性を期待してChatGPTを使ってみたお話をしたいと思います。
早速使ってみる
無料版のChatGPT 3.5を使ってみます。
アカウント登録なしで気軽に始められるのがいいですね。
https://chat.openai.com/
今回は履歴を取っておきたかったので、ログインして使用しています。
1. 天気
以前SiriやAlexaに聞いていた天気から雑に聞いてみます。
2022年までの情報なのでお断りを受けました。「通常の」と前置きして回答が続いていますが、過去の情報から確率的な回答を生成するのは大規模言語モデル (LLM) の特性ですね。有料版で提供されているWebブラウジング機能やプラグインを利用すれば最新データが取得できます。
おもしろいのが、一度詳細な質問 (大阪市の今日の天気) をした後にあいまいな質問 (今日の天気) をすると、大阪市の天気情報を返してくれました。一連の流れから私が大阪市の天気を知りたいということを学習しています。
【ChatGPT vs 検索エンジンは?】
→検索エンジン
検索エンジンで同様のキーワードで検索すると最新情報を得ることができるので、リアルタイム性が求められるものについては検索エンジンに軍配が上がりました。
どんどんいってみましょう。
2. 献立
タコライスという斜め上な回答が返ってきたので、和食中心でリクエストしてみます。
和食寄りのメニューになりました。
おでんが入っているので、あまり季節は考慮されていないようです。その場合は季節のキーワードを追加すると良いですね。天気と同様、リクエストはしていませんが前回の質問内容を学習して1週間分のメニューを出してくれました。
【ChatGPT vs 検索エンジンは?】
→検索エンジン?
ChatGPTは各メニューのレシピやURLがほしいとリクエストすれば答えてくれますが、検索エンジンは検索結果をクリックすれば大体のサイトにレシピが載っているため、メニューが決まってからそのレシピを探すという手間が少ない印象です。
3. 傾向調査
ChatGPTの強みが出た回答ですね。
【ChatGPT vs 検索エンジンの結果は?】
→ChatGPT
膨大なテキストデータから動向調査のまとめを出してくれるので、時間短縮にもつながりました。
4. 苦手分野のアイディア出し
確かにどれも読みたくなるようなタイトルですね。私では到底考えつきもしません。
このように、知識や経験の浅い分野で高い満足感を得られる可能性があることが分かりました。
【ChatGPT vs 検索エンジンの結果は?】
→ChatGPT
検索エンジンの場合、色々な記事を読み効果的なタイトル作成のコツを習得する時間が必要となるでしょう。ChatGPTなら膨大なデータから効率よく効果的な回答を生成してくれます。
5. 翻訳・要約
かなり自然な日本語になっています。また、337文字の翻訳を182文字 (約1/2程度) に要約してくれました。長文を要約したい場合などは要約文字数を指定すると、その指定文字数に近い形で返してくれます。
【ChatGPT vs 検索エンジンの結果は?】
→ChatGPT
自然な日本語かつ要約が非常に便利な機能だと感じました。
ChatGPTと検索エンジンの比較
ここではChatGPTと検索エンジンの違いを5つ挙げてみたいと思います。
1. ユーザー体験
実例で上げたように、ChatGPTと検索エンジンはそれぞれに得意分野があります。
ChatGPTは対話型のコンテンツ生成をしてくれるのでSiriやAlexaのように会話が出来る楽しみもあります。ChatGPTはより自然な対話方式で提案を交えた情報を得ることができるので、その強みを使ってお悩み相談もできそうですよね。
検索エンジンは「何かを知りたい」という目的はChatGPTと同じですが、情報される情報はキーワード検索に基づいており、それに対する選択や理解はユーザーの判断にゆだねられます。ユーザーとの対話は生まれないため、これはChatGPTとは大きく異なる点です。
2. 検索時間
検索時間の短縮という当初の目的ですが、ChatGPTと検索エンジンではChatGPTに軍配があがっているという研究報告 (※1) が既に出ています。
個人で使ってみた感想としては、ChatGPTは非常に整理された回答を返してくれるので、簡易な内容の回答を知るには手っ取り早く大変便利だと感じました。
質問を入力して回答を読み終わるまで数分もかからないため、検索エンジンと比べて大幅な時間短縮となります。
※1:ChatGPT vs. Google: A Comparative Study of Search Performance and User Experience (ChatGPT vs Google: 検索パフォーマンスとユーザー体験の比較研究) (英文)
https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/2307/2307.01135.pdf
3. リアルタイム性
ChatGPTは無料版ではリアルタイム性を求められないこと、有料版であればそれが可能であることが分かりました。
検索エンジンはリアルタイム性を得意としていますし、多くのサイトではその記事がいつ作成・更新されたのか日付が表示されているので、情報を取得する際に情報の鮮度も知ることができるのは大きな強みと言えると思います。
4. ソースの信頼性と情報の深さ
ChatGPTは膨大なデータから回答を生成してくれますが、そのソースの信頼性は高いとは言えません。みなさんが検索エンジンを使う場合は、ソースの信頼性まで含めて情報収集をしていることが多いのではないでしょうか。
例えばサザンオールスターズのメンバーが誰なのかをChatGPTに質問してみると、20年以上前に脱退されたメンバーの方が出てきたり、逆に現役メンバーが認識されていない、という結果になりました。検索エンジンなら公式サイトを見れば正しい情報を1回で得ることができます。
また、ユーザーがある程度知識のある分野の質問や検索エンジンでキーワードを修正しながら深堀りするものについては、一般的な回答を生成するChatGPTでは辿りつくことが難しいという側面があります。
以上から、ChatGPTの場合ソースの信頼性と情報の深さに物足りなさを感じるかもしれません。
5. 探求心
ChatGPTはユーザーの不得意分野の突破口を見出すこと (実例の「苦手分野のアイディア出し」を参照) に高い効果を発揮しますが、素晴らしい回答が返ってくるがゆえにユーザーの探求心を削ぐ可能性はないだろうか?というのが疑問に感じた点です。
これは少し難しいところかもしれませんが、検索エンジンは時間はかかるけれどもキーワードを駆使しながらより自分が求めている情報に辿りつくので、探求心が満たされたり理解への満足感を得ることが出来ると言えるのではないでしょうか。
最後に
ChatGPTと検索エンジンはそのニーズの違いから利用する私達が利用目的に沿って選ぶことが大切になります。
今回ChatGPTを使ってみて、ChatGPTと検索エンジン両方の良さを知ることができたのが大きな収穫です。今まで検索エンジンばかり使っていましたが、今後ChatGPTも併用していこうと思いました。
興味はあるけれどChatGPTをまだあまり使ったことがないという方や検索エンジンで少し困っているという方は、ChatGPTも取り入れてみてはいかがでしょうか。
ChatGPTも検索エンジンも機能追加や性能向上により常に進化しているため、今後もより豊かなユーザー体験が期待されます。AI技術は今後ますます事業に参入していくでしょうし、私達の生活にも深く関わってくることは容易に想像できそうですね。これからもっと技術革新が進んでいくことを、私も非常に楽しみにしています。